マンション管理士試験過去問研究(第9回)解説編(3)

マンション管理士試験過去問研究(第9回)を終わらせてしまいたいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

マンション管理士試験平成21年度問20

違反建築物等に対する措置等に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.特定行政庁は、一定の建築物について、そのまま放置すれば著しく保安上の危険となるおそれがあると認める場合、当該建築物の所有者等に対して、直ちに、保安上必要な措置をとることを勧告することができる。

2.特定行政庁が、一定の建築物について、公益上著しく支障があるとして、当該建築物の除却等を命ずる場合、当該命令に基づく措置によって生じた通常生ずべき損害については、当該建築物の所有者が負担する。

3.特定行政庁が建築基準法違反の建築物の建築主等に対して是正措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないときは、行政代執行法の定めるところに従い、特定行政庁自身が義務者のなすべき行為をすることができ、当該特定行政庁はその費用を義務者から徴収することができる。

4.特定行政庁が、緊急の必要がある場合において、仮に、違反建築物の使用禁止又は使用制限の命令をすることができ、この場合、当該命令を受けた者は、特定行政庁に対して公開による意見聴取を求めることはできない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・



今回は、現場対応という観点より検討しております。

現場対応という意味で、肢2と肢3について検討します。

肢2も肢3も共通した問題点があります。

それは、当該建築物を除去等した場合、その費用(あるいは損害)は誰が負担するのかという問題点です。




で、肢2と肢3の状況の違いを見てみます。

肢2は、「公益上著しく支障があるとして、当該建築物の除却等を命ずる場合」です。すなわち、公の利益のために個人の建築物等が犠牲になる場合です。

たとえば、空港の近くある建物が運行の邪魔になるということで、当該建築物の除却等を命しられた。この場合、費用や補償はどうなるか?

当然、自治体が費用を負担し保障をすべきであると考えられますよね。

ところが肢2は、「当該命令に基づく措置によって生じた通常生ずべき損害については、当該建築物の所有者が負担する。」としておりますので、これは間違いということがわかると思います。

みんなのために犠牲になって、補償はなく自腹というのは、話がヒドすぎるということです。そりゃそうですよね。補償くらいは当然です。





ところが肢3は、「建築基準法違反の建築物の建築主等に対して是正措置を命じた場合」です。違反建築物を建てたのは所有者の意思であり、そのことを是正する費用は当然所有者が負担すべきです。

違反建築物に対して税金を使ってフォローしたとすれば、むしろ納税者から抗議が殺到すると思います。

たとえば、放火犯が放火した建物の修理代金を放火犯に請求しないで、税金から支出するようなものですから。

違反者がその違反を是正する費用は、当然違反者が負担します。

よって、「その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないときは、行政代執行法の定めるところに従い、特定行政庁自身が義務者のなすべき行為をすることができ、当該特定行政庁はその費用を義務者から徴収することができる。」というのは正しいことになります。



つまり、肢2は普通(適法)状態、肢3は違法状態という違いがあって、それが費用負担の違いとなるというのが、この問題のポイントとなります。



要は、その違いに気づくかどうかが、正解を出せるかどうかの分かれ目になるわけですが・・・これくらいであれば、なんとか現場対応できなくはないと思います。

あきらめないで現場対応すれば(真剣に考えて解答をひねり出すこと)、何点が増える可能性が少なくないのですから、簡単にあきらめるのは良くないと思います。

ぜひ、現場対応がんばってほしいと思います。





ということで、現場対応についてお話をしてきました。

試験の世界では現場対応ということを軽視する傾向にあります。

教科書で学んだことは出来る、学んでいないことは捨てる、という主張が多いように思われます。

勉強していないことは一切できません、考えることも無駄です、と。

試験の世界に閉じこもって一般社会とは切り離された世界で生きていくのであれば、そういうことでよいかも知れませんが、一般社会の常識で考えてみてほしいと思います。

「教科書で学んだことは出来るけど、そうでないことは出来ません」

というのは、いわゆるマニュアル人間とか言われて、使えない人材の代表みたいに低く評価されるのではないですか。

試験に合格するとかしないとか以前に、自分自身をそういう「マニュアル人間」に養成して、それでいいのでしょうか?




未知の局面、未知の状況において、いかに現場対応して乗り越えてゆくのか、そういうことが試されるのが一般社会人の仕事であると思います。

どうして試験の世界では、「学んでないことは出来ません」という子供のような話を堂々というのでしょうか。

いくら難しい試験に合格したとしても、そういう幼稚な考えしか持ち得ないのであれば、むしろ試験の世界にいることはマイナスであると思います。合格したけど、人間がダメになってしまっては本末転倒ではないのでしょうか。

学んでいないことであっても、自分の持てる能力をフル稼働してなんとかする。

一般社会では普通によく行われていることであります。

それは言うまでもなく、とても大切なことです。

幼稚なマニュアル人間か、それとも自分の能力をフルに活動させて戦うプロなのか、そういう分かれ目になることだからです。





現場対応というのは、実は、本質的にとても深い話になります。

現場対応を否定し、幼稚なマニュアル人間として合格へ誘導しようとする受験業者とは、あまりかかわらないほうがよいでしょう。試験に受かって人生ダメにすることになりますので。

そういうわけで

私は受験生の皆様には、自分の能力を信じて、日々、考え理解する勉強を心がけてほしいと思っております。

見たことのない問題でも、正々堂々と現場対応して乗り越えてほしいとも思っております。

資格試験には、合格・不合格よりも100倍重要なことがあるということです。

合格にこだわりすぎて、人生を見失わないように・・・



がんばりましょう!