マンション管理士試験過去問研究(第9回)解説編(2)

マンション管理士試験過去問研究(第9回)〜解説2をやります。

まずは、こちらの問題から



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マンション管理士試験平成20年度問21

共同住宅の界壁に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1.共同住宅の各戸の界壁は、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達するものとしなければならない。

2.給水管、配電管その他の管が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管と界壁とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

3.換気、暖房又は冷房の設備の風道が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に1.5m以内の距離にある部分を不燃材料で造らなければならない。

4.給水管、配電管その他の管が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に1m以内の距離にある部分を不燃材料で造らなければならない。

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どういう悪習かわからないですが、建築設備に関しては、暗記以外に方法がないようなことをいう人が結構います。

しかし、建築設備においても、それぞれ成されていることに意味もあれば理由もあり、内容もあります。

意味のあることを理解しようとせずに丸暗記するのが非効率的な勉強法であるのは、建築設備でも同じことです。

意味がわからなくても、せめてイメージだけでも持って、頭に入れるようにしていただきたいものです。

「丸暗記は最悪の勉強法」

すべての科目において鉄則でございます。





さて、本問題ですが、

界壁とは、集合住宅などの各戸と各戸の間を区切っている壁のことをいいますが、この壁は区分所有者間の境界の壁ですので、ある程度きちんとした防火・防音性能が必要であることは想像がつくところであると思います。

肢1は基本的な界壁の性能で、防火の観点から少なくとも準耐火性能であるとし、防音(あるいは防犯)の観点から小屋裏又は天井裏に達するものとしなければならないとされております(建築基準法施行令114条1項)





肢2〜肢4は防火区画についてです。

界壁に防火区画としての働きを持たせることによって、火災の際の炎や煙が他の部屋へ広がらないようにする。そのためには、具体的にどうすればよいか?

というのが、肢2〜肢4の問題点となっております。

そういう意味では、肢1と肢2〜肢4とでは異質な話ですので、肢1を正解とするのは若干センスが悪いといえるでしょう(笑)

それはともかく、肢2ですが、

防火区画を貫通する配管やダクトなどがあった場合、その周辺の隙間から防火区画の反対側に火がまわるおそれがあるので、その隙間を埋める必要があります。

そこで、給水管、配電管その他の管が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管と界壁とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない、としております(建築基準法施行令114条5項による同112条15項の準用)





さて、問題となりますのは、肢3と肢4です。



肢3は、「風道が界壁を貫通する場合」肢4は、「給水管などが界壁を貫通する場合」ですが、この違いが防火区画の形成においてどのような違いとなるのでしょうか?

ポイントは管の中身です。

風道の場合は、中は空。給水管の場合は、中は水です。

それが結論を左右する「違い」となります。




風道の場合は、管の中は空洞です。だから、そのままでは炎や煙がその空洞を通って反対側へ簡単に侵入することとなりますので、せっかくの防火区画が台無しになってしまいます。

そこで風洞内に、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖する防火ダンパーのような特定防火設備を設けなければならないとされております(建築基準法施行令114条5項による同112条16項の準用)

つまり火災時に風道を遮断して煙や炎を通さないような設備の設置が必要なのです。

よって肢3は誤りです。

ところが給水管の場合は、管の中身が水ですから炎や煙を通しません。

よって、管が燃えなければそれでいいので、「当該管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に1m以内の距離にある部分を不燃材料で造らなければならない」ということでOKとなります(建築基準法施行令129条の2の5第1項7号イ)

よって肢4は正しい。



いかがでしたか。

「似ているけど違うもの」ということで、肢3と肢4の比較が勝負だったのですが、結局、どういうことに気づけばよかったかといいますと

「風道は中身が空洞であるから炎や煙を通す」

ということでした。これくらいなら現場対応で得点することも可能であったのではないでしょうか。

そして、そういう可能性のある問題で、1点2点得点を増やすことが、この試験ではとても大きいことになります。




マンション管理士試験平成21年度問20は次回に