マンション管理士試験過去問研究(第8回)解説編

マンション管理士試験過去問研究(第8回)の解説をやります。

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平成18年度マンション管理士試験 問26




規約に定めることができない事項は、標準管理規約によれば、次のうちどれか。

1.各組合員の議決権は、過半数で決する事項については1住戸1議決権とし、それ以外の事項については共用部分の共有持分の割合によるものとすること。

2.住戸と地階にある倉庫を共に所有する区分所有者が、倉庫のみを分離して他の区分所有者及び専有部分の賃借人に譲渡することができるものとすること。

3.専用使用権が設定されていなかった屋上テラスに面する住戸の区分所有者に、屋上テラスの専用使用を認め、専用使用料を徴収するものとすること。

4.高木になり日照障害となった樹木の伐採等、日常生活のトラブルの対応に関する重要な事項は、総会の議決事項とすること。

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マンション標準管理規約の問題を解くにあたって、いつも区分所有法を意識するというのが大切です。

区分所有法を土台にしてマンション標準管理規約があるのですから、土台を無視した学習は、結局、クイズ暗記になってしまい実力がつきません。

マンション標準管理規約という独立した単元ではなく、区分所有法とマンション標準管理規約が一体化して理解する。

つまり<区分所有法>⇒<マンション標準管理規約>という連続思考を習慣化してほしいと思います。

そして、その積み重ねが本格的な実力を養成することとなり、合格を引き寄せることとなると思います。




で、肢1ですが、

前提となる区分所有法は、38条の議決権の規定です。

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区分所有法38条 

各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第14条に定める割合による。

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38条では、定めがなければ14条の割合(=共用部分の共有持分割合)を用いるけど、規約に定めがあればそれを用いてかまわないということです。

いわゆる任意規定と呼ばれるものですね。

そのことを踏まえて(つまり自由にできることを踏まえて)マンション標準管理規約では、共用部分の共有持分割合を用いるのもOKで(マンション標準管理規約46条コメント1)、各住戸の面積があまり異ならない場合は、住戸1戸につき各1個の議決権にするのもOK(マンション標準管理規約46条コメント2)であるとしています。

原則自由に定めうる、ということです。

なので、肢1のような取り扱いも可能となります。


肢2ですが、

区分所有法では15条と22条1項の2種類の分離処分禁止の定めがありますが(復習しておいてくださいね)、住戸と倉庫(車庫)との分離処分についての規定はありません。

特に、禁止規定はないので、専有部分となる倉庫(車庫)がある場合は、それはひとつの独立した不動産として、自由に譲渡できることとなります。

しかし、そうすると住戸部分の所有権を持たないで、倉庫部分のみを所有するものが出てくることとなり、管理の観点より好ましくないと考えられます。

そこで、マンション標準管理規約11条コメント2では、

「 倉庫又は車庫も専有部分となっているときは、倉庫(車庫)のみを他の区分所有者に譲渡する場合を除き、住戸と倉庫(車庫)とを分離し、又は専有部分と敷地及び共用部分等の共有持分とを分離して譲渡、抵当権の設定等の処分をしてはならない旨を規定する。 」

として、住戸と倉庫(車庫)との分離処分の禁止を推奨しているのです。

これが、11条本文ではなくコメントでは禁止しているのは微妙なところです。

つまり、不動産は自由譲渡が可能であるのが原則ですので、堂々と住戸と倉庫(車庫)との分離処分は禁止といえない意味があります。資本主義ではなく社会主義の国みたいな話ですから。

「法律上禁止」ということではなく、「現実的に好ましくないから禁止」ということなので、11条本文ではなくコメントでの禁止という形態をとっているのだろうと思われます。



まあ、それはそれとして、本問は、「マンション標準管理規約」で解答するということですので、肢2は11条コメント2により、区分所有者への譲渡は可能だが区分所有者ではない賃借人への譲渡は不適切ということになります。

なぜなら、11条コメント2の趣旨は、「住戸部分の所有権を持たないで、倉庫部分のみを所有するものが出てくることを防ぎたい」ということですので、区分所有者(住戸部分の所有権がある人)への譲渡はOKですが、区分所有者ではない賃借人(住戸部分の所有権がない人)への譲渡はダメということになるからです。



次に、肢3です。



「専用使用権が設定されていなかった屋上テラス」とありますが、マンション標準管理規約の一般的な立場として、バルコニーや屋上テラスは共用部分と考えますので、「専用使用権が設定されていなかった屋上テラス」というのも当然共用部分です。

共用部分について、新たに専用使用権を設定し使用料を徴収することは、区分所有法でいうところの管理行為として可能であるので、肢3は適切であるといえます。

なお、マンション標準管理規約では14条コメント3に該当するということでいいでしょうか。


肢4は、

マンション標準管理規約38条コメントそのままですので、クイズの解答は一瞬で出ることとなります。

でも、例によって内容を検討します。

「日常生活のトラブルの対応」というのは漠然と広い概念ですので、管理組合で本当にどこまで対応できるかは、わからないところがあります。

なぜなら、過去問でもきかれていることですが、

共同の利益に反する行為への対応は、区分所有法57条ないし60条(マンション標準管理規約66条)

それ以外の規約違反等は、マンション標準管理規約67条で対応できますが、

住民間のトラブルは、管理組合がどうこうできる問題ではなく、当事者間の問題(不法行為の問題)となるからです。



まあ、仮に対応できる範囲であったとすれば、

問題になるのは、理事長、理事会レベルで対応が可能か、それとも総会の決議が必要であるかということになるでしょう。

本肢の内容がマンション標準管理規約38条(理事長)のコメントとされているのも、そのあたりを考察したものと思われます。

例示の「高木になり日照障害となった樹木の伐採」は、自然に考えれば重大変更ですので、総会の決議事項とするのは当然ですし、「日常生活のトラブルの対応」には共同の利益に反する行為への対応が多く含まれているでしょうから、それも総会の決議事項とすべしです。

よって、

軽微な案件が理事長・理事会での対応も可能だが、重大な案件については総会の決議事項とする、ということとなるのでしょう。


ではまた