マンション管理士試験過去問研究(第7回)解説編
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平成20年度マンション管理士試験 問37
マンションの打放しコンクリートの外壁のひび割れの調査と補修に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
1 ひび割れの調査は、ひび割れの幅だけでなくその形状や分布状態(パターン)についても調べることが必要である。
2 ひび割れは、幅が0.3mm以下であっても、コンクリート内部に雨水等が浸入し、漏水の原因になる場合がある。
3 挙動があるひび割れを充てん工法により補修する場合は、可とう性のエポキシ樹脂やシーリング材を使用することが一般的である。
4 ひび割れを樹脂注入工法により補修する場合は、確実に樹脂を注入するため、高圧高速で注入する方法が一般的である。
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「ひびわれ」というのは、マンション管理士試験ではひとつの独立した単元というほどに、頻繁に出題されております。
にもかかわらず、どうして対策しないのでしょう???
この4肢くらいの基礎レベルの論点であれば、完全的中くらいして当たり前と思われますが、不思議ですね。
税理士とか司法書士など一般的な資格試験の参考書は、きちんと調べて、系統的に整理して論点をつぶしてゆくようにできています。
もちろん、出題のある論点だけでなく、その周辺の論点も網羅されてあるのは当然です。
たとえば、民法で、成年被後見人が出題され被保佐人が出題されていなかったとしても、制限行為能力者制度において、成年被後見人だけ記載して被保佐人については何も記載しないテキストを作るのはありえないでしょう。
そんな気持ち悪いテキスト作ったら、その予備校は受験生からまともに相手にされなくなるんじゃないですか。能力に疑いがあるということで。
今回、大手予備校3社のテキストを見てみましたが、
マン管の建築設備の分野では、過去問論点だけを記載して継ぎはぎして、周辺論点を無視したテキストばかりですね。
クレーム来ないのでしょうか???
過去問論点と同じくらいに周辺の未出基礎論点は出題可能性が高いのですが、数え切れないくらい無視するって・・・驚きですね(笑)
要するに、最初から論点を的中させようとか、そういうことは考えてなくて、過去問丸写しを連発すると楽なので、簡単にテキストもどきを作って売ってしまえということでしょうか。
???
やれやれ、マン管受験生は、ほんとに大変だと思います。
ではまあ、グチグチいってても仕方ないので、やりましょうか
肢1
1 ひび割れの調査は、ひび割れの幅だけでなくその形状や分布状態(パターン)についても調べることが必要である。
この肢から考えられる周辺論点は、「形状や分布状態(パターン)」すなわちひび割れのパターンの把握でしょう。
もちろん、すべてのひび割れがパターンによって起こるわけではないですが、ベーシックというものはあって、そのベーシックが試験に出るのは当然のことといえましょう。
本試験では「窓ワク周りのひび割れ ⇒ 乾燥収縮」というのがでましたが(平成18年問38)
同様に、出題が有力なものには、鉄筋腐食によるひび割れ、アルカリ骨材反応によるひび割れ、コールドジョイントによるひび割れ、凍害によるひび割れ、水和熱によるひび割れ、不同沈下によるひび割れ、等があります。
それぞれ特徴があって、ベーシックといえるパターンがあります。
そういうことが、テキストに書かれてあると、マン管受験生としてはありがたいのですが・・・
さて、どれが出るのでしょうか?
肢2ですが
2 ひび割れは、幅が0.3mm以下であっても、コンクリート内部に雨水等が浸入し、漏水の原因になる場合がある。
ひび割れの幅とその補修方法に関してはベーシックがあります。
0.2mm(あるいは0.3)以下 ⇒ 表面被覆工法
0.3mmから1.0mmまで ⇒ 注入工法
1.0mm以上 ⇒ 充填工法
もちろん、すべてのひび割れが上記のようになるわけではないですが、上記の定石を基準として話が進んでいくわけです。
本試験が、0.3mmにこだわるのは、こだわる理由があるということです。
クラックスケールで幅を測定するとか、0.3mm以下であるとか、そういう部分に出題があるのは、補修の方針を立てる大前提としてひび割れの幅や挙動性のチェックが必要だからです。
以上により、本試験がひび割れの幅にこだわっているのは明らかで、何度も出題しているのですから、いいかげんに真面目に試験対策する気があるのであれば、ひび割れの幅と補修方法に関する記述をテキストに入れるべきです。
何度も出題されているものを、きちんと研究しないで放置しておくのは、怠慢というより論外というレベルなのではないでしょうか。
また、上記3工法には、それぞれに論点があります。
それを事前に整理して学習しておけば、本問題はベーシックしか出ていませんので、普通に得点が可能であったといえます。
肢3ですが、
ここでは「挙動があるひび割れ」が重要な論点となります。
鉄筋腐食やアルカリ骨材反応のように、ひび割れの原因が内部で進行している場合には、外壁に現れるひび割れも進行してゆくこととなります。
もちろん、その原因を除去できればそれでよいのですが、現実的・経済的に難しいということが多くあります。
その場合、ひび割れのみを補修することとなるのですが、そのときに補修材として何を用いるかが、この問題の論点となります。
本来、コンクリートの補修ですので、ポリマーセメントモルタルとかセメントスラリーとかセメント系の材料で補修するのがよいと思われます。
ところが、「挙動があるひび割れ」を硬いセメント系の材料で補修すると、その挙動によって再び割れてしまいます。
そこで、可とう性のある樹脂系の材料(エポキシ樹脂やシーリング材)を用いることによって、挙動による再度のひび割れを防ぐことができるというわけです。
なお、「可とう性のある」というのを「柔軟性のある」と読み替えればわかりやすいと思います。
ちなみに関連論点としては、同じ可とう性のある材料でも樹脂系材料は使うけどゴム系材料は用いないとか、ひび割れの挙動性の測定には、コンタクトゲージとかワイアストレインゲージとかを用いるというところでしょうか。
肢4ですが、
これはベーシックですね
ひび割れに樹脂を注入する場合、時間をかけて低圧で注入します。
理由は簡単で、高圧高速だと
高圧 ⇒ ひび割れを拡大させてしまう
高速 ⇒ 樹脂が隅々まで行き渡らない
という問題があるからです。
で、この肢4が正解のようですが、
この論点なら予想するまでもなく、どこの参考書・テキストにも「昨年以前の段階で」書かれていて当然の基本論点です。
しかし、「過去」問しか載ってない。
予備校には、かたくなに過去問論点しか載せないという、宗教みたいなものがあるのでしょうか。
どの分野のどのジャンルにも基本というものが存在します。
普通に基本を学んで、基本をテキスト化し教えるのは、教えることを仕事とする者の最低限の義務ではないのですか。
ひたすら過去問を後追いし、丸写しして、何をどうしようというのでしょうか。
高額の講座をとれば、普通に基礎を教えるけど、市販の廉価な本はテキトーに過去問丸写し連発で十分ということなのでしょうか。
何をブチブチ怒っているのかといいますと、
マンション管理士試験で、建築設備において、過去問と同一論点が出るのは、せいぜい50%くらいです。(ズバリ同一という絞りでいえば50%も難しいと思います。)
にもかかわず、残りの50%に対して、相当な労力をさいて情報提供しないというのは、試験対策のプロを名乗っておきながら、対策をサボっていることとなるのではないでしょうか。
そういうプロ意識の低さが蔓延していることに、講師としては怒りを感じているということです。
確かに、建築設備で、過去問論点を全部押えれば、50%程度は正解できますので、合格戦略としては、それもアリと思います。
受験生としてはそれでOKですが、
講師たるものが、残りの50%について研究することもなく、まともに基礎を勉強しようともせず、過去問を切り貼りしてテキストであると主張するのは、最低最悪な話ではないかということです。
プロとしてプライドはないのかと。
まあ、そうですね、
私も業界長いですから、言ったところで無駄だという業界事情は承知しております。
だから、現役のプロ講師として、自分の講義で限りなく100%的中に近づいていけるよう、頑張っていくしかないということですね。
私はプロとして、これからも頑張っていく所存でございます。
ということで本稿はこれで終わりです。
ではでは