マンション管理士試験過去問研究(第5回)解説(2)
・・・・・・・・・・
平成20年度マンション管理士試験問26
A〜Dに必要とされる集会の決議(ア、イ)とA〜Dが特別の影響を及ぼすべきときに必要な区分所有者の承諾(①、②)に関する次の組み合わせのうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
A 建物の外壁に新たにエレベーターを外付けして設置する工事
B 計画修繕工事に関して行うエレベーター設備の更新工事
C 不要となったダストボックスを撤去する工事
D 非居住用途の専有部分について、居住用途以外の使用を禁止する規約の変更
ア 区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数
イ 区分所有者及び議決権の各過半数
① 専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときの当該専有部分の所有者の承諾
② 一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときの当該区分所有者の承諾
1 Aとアと①
2 Bとイと②
3 Cとイと①
4 Dとアと②
・・・・・・・・・・・・・
こういう「Aとアと①」のような、話を複雑にしようとする出題形式は過去に何度かありますが、一般論でいえば問題は簡単な問題です。
といいますか、簡単な論点だから複雑な出題形式にして惑わそうとするのであって、論点が難しいのであればそのままストレートに出題するだけのことです。
つまり、「出題形式を複雑にするのは論点が簡単だから」ということが原則的にいえるということです。
だから、こういう複雑な出題形式問題が出たら、
「落ち着いて処理すれば1点いただき」
と考えるのがよいでしょう。
で、その処理のしかた(つまり解き方)としては、問題文の条件をつなぎ合わせて論理的に答えを出す方法と、肢1から肢4までの設定をそれぞれ当てはめて答えを出す方法がありますが、当てはめでやるのが無難かと思われます。
論理的にやるのは短時間で解けるというメリットがありますが、うまくいかないとかえって時間を使ってしまいますので、1肢1肢地味に当てはめで確実にやるのがお勧めということになります。
次に、簡単に解説しますが、
Aは「エレベーターの新設」ですが、新設であればすべて特別決議というわけではなく、工事の内容がどうか?というのが判断基準になるのでしょう。
だから、「手すりの設置」のようなものは新設ではあるけれど、躯体部分への加工の度合いは小さいので普通決議となり、「エレベーターの新設」は躯体部分への影響が大きいので重大変更となる、というところでしょうか。
Bは、形式的には変更だけれども実質的には「修繕」に該当する行為なので、軽微変更と考えるということです。
Cは、「不要となったダストボックスを撤去する工事」って、私見ではゴミを掃除するのと同じ理屈ですから保存行為と考えてもよいのではないかと思っております(ご存知のとおり共用部分の一般的な清掃は保存行為ですから)。
しかし、標準規約にも例示がありますし、軽微変更(or管理行為)と解釈するのもアリとは思います。
いずれにせよ、もし重大変更と考えられた方につきましては、やや感覚がズレていますので、早急に復習して修正してほしいと思います。
さて
問題のDおよび①と②です。
取りあえず、Dと①②は、ひっかけになっていることは、お気づきでしょうか?
3つならべておきますので、何のひっかけになっているのか、もう一度ご確認ください。
・・・・・・
D 非居住用途の専有部分について、居住用途以外の使用を禁止する規約の変更
① 専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときの当該専有部分の所有者の承諾
② 一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときの当該区分所有者の承諾
・・・・・・
Dでは「使用を禁止する規約の変更」とあるので、①の「使用に特別の影響」と結びつくと考えるのがとても自然です。
しかし、Dは規約変更ですので、①(17条2項)でなく②(31条1項)と結びつくのが正しいということになります。
良く考えたひっかけではあるのですが、本質的には悪問に属するのだと思います。
早い話が、単なる言葉ひっかけの問題だからです。
①と②は、本質的には、多数決による多数派の横暴があった場合に少数派を保護しようという、同じ趣旨の話です。
そして、区分所有法では「権利関係」と「管理」を分離して考えるのを前提として、
①は、管理(17条、18条)の局面ですので、権利というのは問題にならず使用を問題とすればよいので、「使用」という表現が使われているのでしょう。
②は、規約変更の局面ですので、権利に影響を与える場合と使用に影響を与える場合と両方が考えられます。が、使用に影響を与えるというのを使用権とか利用権とかという一種の権利に影響を与えると考えて、「権利に特別の影響」という表現ですべてを包含しているのだろうと思われます。
(以上は、私が勝手に解釈したことですので、どこの本にも載ってないので念のため)
よって、同じ趣旨の話でありながら、表現が違うことになったのだろうと思いますが、
もし、「これを区別して暗記しなさい」と指導するのであれば、クイズ的丸暗記以外の理由で本質的に区別して覚える実益がどこにあるのか、教えていただきたいものです。
異様に言葉にこだわるのはかえって本質を見失うこととなりますので、①と②は同じ話(=少数派の保護)と思っていただいていいと思います。
だから、ひっかかるのもしょうがないのかな、と思いますね。
本質的に大切な区別ができないのは、問題ありとは思いますが、言葉のひっかけのようなものにひっかることは、気にしなくていいと、私は考えております。
ま、それはともかく、現場の解答処理ですが、
「権利関係」と「管理(使用)関係」は分離して考えるのは区分所有法の基本ですので、
「権利」が問題となるのは規約変更、「管理」の局面では「権利」は問題とならないと考えて答えを出すということになるのでしょうか。
しかしまあ、それが理解できるようになれば、合格レベルをはるかに超えていることになりますから・・・やはり、間違うのもやむなしというところでしょうか(笑)
同じ趣旨の話なのに、①と②の表現に違いがなぜあるのか?
とても難解な話でございます。
また、本質的に、その違いを勉強する必要はないと思いますので、適当に軽く流していただくのが試験対策上正解ではないかと思います。
余談ですが・・・
過去問を過剰に絶対視して、すべての過去問について出来るようにならないといけないと考えるのは不合理だと思います。
取捨選択というのは、当然、過去問にも当てはまることでございます。
結局、マンション管理士試験に限らず試験を上手に勝ち抜く人というのは、力の入れるところと抜くところが上手にできる人ということになるのだろうと思います。
みなさまも、上手にやっていただきたいと思います。
この稿はこれで終わりです。