マンション管理士試験過去問研究(第3回)解説編(2)

マンション管理士試験過去問研究(第3回)の解説(2)です。

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平成19年度問33

1階は店舗部分で2階から5階が住宅部分であるマンションの管理組合から規約の作成を依頼されたマンション管理士が同マンションの区分所有者に説明した次の記述のうち、マンション標準管理規約(複合用途型)によれば、適切でないものはどれか。

1.規約の対象物件のうち共用部分については、全体共用部分、住宅一部共用部分及び店舖一部共用部分に区分しますが、一部共用部分も含めて全体を管理組合が一元的に管理します。

2.全体共用部分は区分所有者全員の、住宅一部共用部分は住戸部分の区分所有者のみの、店舗一部共用部分は店舗部分の区分所有者のみの共有として、それぞれの共有持分を定めます。

3.店舗の前面の敷地については、当該店舗の区分所有者に専用使用権を設定しますが、使用料については、その管理に要する費用に充てるほか、店舗一部修繕積立金として積み立てます。

4.住宅部分について住戸部分の区分所有者で構成する住宅部会を設け、店舗部分について店舗部分の区分所有者で構成する店舗部会を設けることとします。

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さて、この問題ですが、

前回解説いたしました、マンション管理士試験平成18年度問32と本質的には同内容の問題であることにお気づきでしょうか。

前回は「団地型」で、今回は「複合用途型」と状況は異なりますが、問われていることの本質は同じです。

言い換えれば、同じ意味のことを2年連続して出題したということになります。

もし、前回(マンション管理士試験平成18年度問32)と今回(マンション管理士試験平成19年度問33)との共通性が感じれない方は、ぜひ、もう一度、各問題を再検討して、この後を読み進めていただきたいと思います。

考えないで答えを教わってしまっても、たぶん、右から左へ流れてゆくだけで、実力として身につかないからです。

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さて

同じ意味のことを繰り返し出題というのは、マンション管理士試験(管理業務主任者試験も)ではよくあって、推測なのですが、重要だけれども正解率が低い部分については、たとえ2年連続になろうともどんどん出題してその重要性をアピールしているようにも思われます。

過去問というのは、受験生に対する「ここは勉強してくださいね」というメッセージに他ならないので、そのあたりを汲み取るように過去問を研究すればより効率的な勉強が実現するものと思われます。

特に重要な部分につきましては、昨年出題されたから今年は出ない、ということには、ならないことに注意が必要です。




では、解説します。

「全体共用部分」「住宅一部共用部分」「店舖一部共用部分」とは、同じ建物内部の話ではあるけれども、共有者が違います。

たとえば、こんな感じです。

「全体共用部分」⇒ ABCDEFの共有

「住宅一部共用部分」⇒ ABCDの共有

「店舖一部共用部分」⇒ EFの共有



この場合、それぞれは持ち主(共有者)が違いますので、権利関係の個々別々に管理も個々別々にやることになります。

ABCDの共有部分について、部外者であるEとかFとかが関与するのはおかしいですよね。ABCDの共有部分については、ABCDで、EFの共有部分についてはEFでやるのが自然といいますか当然の帰結になります。

ただし、管理については、一括で管理したほうが便利であるということがありますので、一括管理が可能になっております。

そして、それこそが、前回の問題との共通点ということになります。

(原則)個々別々の権利関係、個々別々の管理

(例外)管理については一括管理が可能



団地型と複合用途型では状況が違いますが、考え方は上記のように同じです。

団地型は、客体の違い(区分建物、附属施設、敷地)によって、個々別々の権利関係があって個々別々で管理するのが原則。

複合用途型はメンバー(共有者)の違い(全体共用部分、住宅一部共用部分、店舖一部共用部分)によって個々別々の権利関係があって個々別々で管理するのが原則。

ということになります。

さらに、マンション標準管理規約が、管理の実情を重視して一括管理を原則と考えている点は把握しておけばよいでしょう。




では、各肢を見ていきますが、上記の理解があれば、問題なく解答できるかと思われます。



肢1は、上記原則どおりで、個々別々の権利関係がありますが、管理については一括管理を前提としているのが、マンション標準管理規約の立場となります。

なお、どういう場合に区分所有法では一括管理になるかということは、復習しておいてください。




肢2は、上記原則がそのままです。




肢3ですが、この肢は、おもしろい肢ですね。

使用料について管理等に費消した残金は修繕積立金へ充当するというのは、マンション標準管理規約の知識としては常識だろうとは思います。

上記原則にありますように、権利関係は個々別々に存在し、費用・収益といった類のものも個々別々となりますので、修繕積立金の個々別々に存在することになります。

「全体」「住宅」「店舗」の3種類です。

で、土地からの収益の残金をどれへ充当するのがよいかということになりますが、複合用途型は単棟型マンションの1種ですので、土地の共有者と建物全体の共有者は同じです。

ならば、建物全体の修繕積立金へ充当されるのは当然といえます。

一応、区分所有法的に根拠づけると21条は費用の条文である19条を準用しているのでOKということになると思いますが、常識の問題として「ABCDEFの共有」の土地から発生した収益を「EFの共有」である店舗へ充当するのは不公平だということです。

そういう意味では、法律の問題というよりは常識力チェックということなのかも知れません。

意味を考えないで、「使用料」⇒「積立金に充当」と丸暗記した人をひっかけようという意図が明らかですからね。

意地悪ですね(笑)




肢4も上記原則どおりでいいかと思われます。




ということですが、前回の問題も今回の問題も、暗記すべき知識は少ないです。

が、理解していないとひっかかるように出来ております。

マンション管理士試験の問題は、そういう理解をきいてくる問題が多いです。

そういうことを踏まえて、丸暗記ではない勉強が必要であろうと思われます。