マンション管理士試験過去問研究(第10回)解説編(2)

問2ですが、一部共用部分の問題です。

一部共用部分については、根本的な考え方を理解する必要があります。

たとえば肢1について、

一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。(30条2項)

と丸暗記して、誤りとするのは、円周率の数字を暗記するのと同じくらい不毛な丸暗記となるでしょう。

どうして、そういう制度になっているのか?

そこが大切なところです。

 

一部共用部分というのは、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(3条)のことをいいます。

一部共用部分についてもその一部共有者を構成員とする管理組合が自動的に発生し、その管理組合によって一部共用部分は管理されます(仮に一部管理組合と名づけておきます)。

たとえば、ある分譲マンションについて、全体の共用部分以外に10個の一部共用部分が存在したとすれば、一部管理組合も10個存在することとなり、マンション内に構成員の違う11個の管理組合が並存し管理することとなります。

管理組合というものが対象物ごとに自動的に発生するのは論理的には仕方があにとしても、現実的に10個も20個も管理組合が並存して管理というのは、とても大きな混乱があり難しいことでしょう。

そこで、区分所有法は

1.論理的に一部共用部分ごとに管理組合が発生するのは仕方がない

2.しかし、一部共用部分の解釈を狭くして、できるだけ全体共用部分と解釈し

3.また、一部共用部分であったとしても、全体の管理組合が一括で管理するのが望ましいので、一括管理がやりやすいように法の規定を定めよう

として、できるだけ全体管理組合が全部を管理するという状況が実現しやすいようにしているわけです。

実務の現状に合わせたともいえます。



そこで、この考え方を理解した上で、マンション管理士試験平成22年度問2を検討するのがよいでしょう。

まずは、一部共用部分の成り立ちですが、肢4にありますように、規約共用部分でない限りは、共用部分であるか否かは「構造上決定されるもの」であり、一部共用部分についても同じだとということです。

ちなみに、別の年度に出題がありますが、3条では「明らかな」と明記されておりますので、「明らかな」ものだけが一部共用部分であって、それが以外はできるだけ全部共用部分と解釈しようとする姿勢が見られます。

また、一般的に共用部分の議論をする場合、規約共用部分を念頭におくとイメージが狂いやすいので、廊下とか階段などの法定共用部分をイメージして理解するのがおすすめです。

肢1・3は、一部共用部分の全体管理組合による一括管理が実現しやすいように定められている規定です。

一部共用部分であっても

1.区分所有者全員の利害に関係するものは「当然」全員で管理

2.区分所有者全員の利害に関係ないものであっても、「規約の定めがあれば」全員で管理

ということですから、一部共用部分を一部管理組合で管理する展開が少ないということになっております。

 

あと、肢2ですが、

一部共用部分も共用部分の一種ですので、基本的な規律は共用部分と同じです。

12条により、13条から19条までの規定は一部共用部分にも適用があるということになっているからです。

肢1は11条ですが、これも同じです。

 



ということで、いろいろお話させていただきましたが、

時間があろうとなかろうと、独学であろうと予備校利用しようと、

どのような勉強環境であっても、意味のわからないものを丸暗記しても不毛に時間を浪費するという真実に変わりはありません。

理解なしで何も生まれません。

どういう状況でも地道にコツコツと実力を養成する。

そういう姿勢で頑張っていただきたいと思います。