マンション管理士試験過去問研究(第9回)解説編(1)

マンション管理士試験過去問研究(第9回)解説をやります。



1点、2点を争う試験において、現場対応は大切です。

勉強時間が有り余っていて、40点を超えるような得点が期待できる場合は関係ないですが、多くの受験生は合格点近辺の1点2点を際どく争う展開となります。

だから、知らない論点、難しい問題であっても、現場対応で1点、2点増やすことは重要で、それが受験勉強を1年、2年早く終わらせることにつながることにもなります。

作戦と実戦は違います。

マンション管理士試験でいえば、都市計画法とか建替え法とか会計とか、時間がなければ捨てるのはやむをえないと思います。

しかし、それは「作戦」レベルでの話であって、「実戦」においては当然ベストを尽くして点数を取りにいくべきです。

知らないから、勉強してないから、勝負をあきらめて点数を放棄するというのは、40点を超えるような得点が期待できる受験生ならいいと思いますが、微妙なボーダーラインで争っている受験生のやることではないです。

「作戦」として勉強しないということと、「実戦」としてベストを尽くし点数を取りに行くということとは、まったく別問題です。

その区別がわからないとういうことは、真に厳しい勝負を戦ってこなかったということですから、それはそれで幸福なこととは思います。

しかし、厳しい戦いを勝ち抜くということに、資格試験にチャレンジする意味を見出すのであれば、「実戦」において、どのような問題であっても得点を獲得するためにベストを尽くし戦い続けなければなりません。




結局、言いたいことは、

「難しいから捨てる」

「知らないから捨てる」

「面倒だから捨てる」

というのは

お勉強の論理としては、それで正解かも知れませんが、真剣勝負をするという観点からは、賛成できないということです。

困難な局面であればあるほど、真摯に最善を尽くすことが本当に自分自身のためになることであろうかと思われるからです。




そこで、もう一度繰り返しますが、

勉強計画として「勉強しない」ということと、現場で得点を取るために最善を尽くすということは別問題です。

何よりも自分自身のために、本試験現場では最善を尽くす、ということを再確認していただきたいと思います。




ということで今回は、

本試験で、訳のわからない問題が出題された場合、いかに最善を尽くすか。

そういう現場対応について考えてみたいと思います。




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マンション管理士試験平成20年度問21

共同住宅の界壁に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1.共同住宅の各戸の界壁は、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達するものとしなければならない。

2.給水管、配電管その他の管が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管と界壁とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

3.換気、暖房又は冷房の設備の風道が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に1.5m以内の距離にある部分を不燃材料で造らなければならない。

4.給水管、配電管その他の管が共同住宅の各戸の界壁を貫通する場合においては、当該管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に1m以内の距離にある部分を不燃材料で造らなければならない。

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マンション管理士試験平成21年度問20

違反建築物等に対する措置等に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.特定行政庁は、一定の建築物について、そのまま放置すれば著しく保安上の危険となるおそれがあると認める場合、当該建築物の所有者等に対して、直ちに、保安上必要な措置をとることを勧告することができる。

2.特定行政庁が、一定の建築物について、公益上著しく支障があるとして、当該建築物の除却等を命ずる場合、当該命令に基づく措置によって生じた通常生ずべき損害については、当該建築物の所有者が負担する。

3.特定行政庁が建築基準法違反の建築物の建築主等に対して是正措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないときは、行政代執行法の定めるところに従い、特定行政庁自身が義務者のなすべき行為をすることができ、当該特定行政庁はその費用を義務者から徴収することができる。

4.特定行政庁が、緊急の必要がある場合において、仮に、違反建築物の使用禁止又は使用制限の命令をすることができ、この場合、当該命令を受けた者は、特定行政庁に対して公開による意見聴取を求めることはできない。

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改めて、解答を見ないで、上記2問を解いてほしい思います。

この問題のポイントは、「似ているけど違うもの」ということです。

似たようなものが2つあって、その2つの違いを出題するというのは、資格試験ではよくあることです。

たとえばマンション管理士試験&管理業務主任者試験では

○ 法定共用部分と規約共用部分の違い

○ 管理者と管理組合法人の理事との違い

○ 専用使用権と駐車場使用権の違い

○ 履行遅滞による解除と履行不能による解除の違い

○ 補修材としてのエポキシ樹脂とシーリング材の違い

○ 専用水道と簡易専用水道の違い



といったことが出題されております。

こういう「似ているけど違うもの」については、出題が多いのみならず、正解肢であることも多いです。

なぜなら、意味もわからず丸暗記しているのではなく根本的に理解しているかどうかをテストするには、とてもよい材料だからです。

そうすると、正解の肢は、そういう「似ているけど違うもの」について存在する可能性が高いと思われます(実際に過去問を検討してみるとそうなっていることが多いです)。

また別の角度から見れば、そういう出題者の意図をよむことによって、正解する可能性を高めることができるともいえます。




さて、そういうことを踏まえて、上記2問を検討しますと、

上記2問の共通点は、「似ているけど違うもの」が混ざっている問題ということが見えてくると思います。





マンション管理士試験平成20年度問21の場合は

「風道が界壁を貫通する場合」と「給水管などが界壁を貫通する場合」の違い。



マンション管理士試験平成21年度問20の場合は、

「公益上著しく支障があるとして、当該建築物の除却等を命ずる場合」と「建築基準法違反の建築物の建築主等に対して是正措置を命じた場合」の違い



ということになります。



では、その違いが、どういう結論の違いとなるのでしょうか?

あらためて、考えてみてください。



解説は次回に